第9章 あなたの体温

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わたしは長崎くんの胸にめり込むほど頬を寄せて、背中に回した両腕に力を込めた。…すごく、あったかい。 肌の感触が自分の身体の表面にぴったりと吸いつく。他人の身体って、なんて気持ちいいんだろう。 「…こういう感じに。しっかり抱きしめて。身体をくっつけあって」 わたしは目を閉じ、小さな声で呟いた。声を上げて思いきり泣いた後なので喉にかかって変な風に掠れてる。構わず独り言のように続けた。 「体温を、感じてたかったの。…ずっと誰にも触れられてなくて。わたしなんかをぎゅっと抱きしめてくれる人なんかどこにもいなかった。…これからも、そんな相手なんか…。だから、人の肌の温度をいっぱい感じて。…嬉しかった。もっとひとのあったかさに包まれたい。身体の奥にだって…、熱いのでいっぱいに満たされたかった。あんな、プラスチックみたいな。…玩具じゃなくて」 「眞名実」 長崎くんがわたしの名前を呼んだ。両手で顔を挟み、目を覗き込んでからそっと顔を寄せる。唇を重ねられて深くキスされたけど抵抗しなかった。中を探る舌も優しい。 上林くんと高松くんもわたしの身体をそっと愛玩するように撫で回してる。欲情混じりでないこともないけど、意地悪さはもう感じられない。優しい熱心な手つき。     
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