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物憂げに上体を起こした上林くんは人遣い荒いなぁ、とぶつぶつ言いながらもわたしに柔らかい優しい眼差しを向けた。
「まなちゃん、何か食べたいものある?好き嫌いとかない?」
わたしは高松くんの腕の中で体重を預けながら考えて答える。
「割と。…なんでも食べます。好き嫌いはないかも」
「前回ピザだったから。寿司とか。パスタいくつか取ってシェアするとかかなあ。この時間からだから、どのくらいかかるか訊いてみないと」
ベッドを軋ませてスマホを取りに立ち上がる彼の背中にわたしは声をかけた。
「パスタとかなら。わたし、作ろうか。そんなに時間かからないかも。ああ…、寿司は無理だけど、多分」
彼は振り向き、わたしのそばに戻ってきて笑って髪を撫でた。
「ありがと、気持ちは嬉しいよ。でも残念、冷蔵庫になんの材料もないや。真面目に自炊しなきゃだけど、今んとこ碌にしてなくてさ。…それに、まなはそんなこと気を遣わなくていいんだよ。君を家政婦みたいに使うつもりはないから。…ここでは甲斐甲斐しく家事する必要なんかないよ。いつも周りに気ばっかり使って、疲れることもあるだろ?」
素早く頬にキスしてスマホを探しに戻っていった。わたしはそこにそっと手を当て、ぼんやりと考える。
…そうかな。考えたこともなかったけど。
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