第9章 あなたの体温

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長崎くんが後ろからわたしをぎゅっと抱きすくめて呟いた。 「やっぱ、不安なんだよ。まなが俺たちに内心ではうんざりしてて、誰か他の奴のとこに行っちゃうんじゃないかって。いきなり初っ端からイエローカードもらってるし。思えばこのまま俺たちと付き合ってもらえるなんて都合が良過ぎるってのが本当のとこだから…。これから頑張って挽回するからさ。眞名実にいつも笑っててもらえるよう努力するよ。…だから、ここだけはさ。俺たちの思うようにさせてもらっていい?しばらくの間でいいから」 猫の首に鈴つけるみたいなものか。わたしの身体は自分たちのものって確信が欲しいんだな。わたしはしばし考え、一応口先で抵抗してみせた。 「人前でお風呂入れなくなっちゃう。…銭湯とか」 「まな、銭湯なんか行く機会ある?」 わたしは肩をすぼめた。 「高校の時以来一度も」 「じゃあ大丈夫だ。そうだな、今度みんなで温泉とか連れてってやるよ。個室風呂付きの部屋とかなら平気だろ。そういうとこでゆっくりするのもいいな、たまには」 わたしはそこをじょりじょり、と音を立てて剃られながら首を捻った。温泉旅館。一体どういう風に部屋取るんだろう。宿の人たちにどういう仲だと思われる?     
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