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感情は割り切れずわだかまりが胸に重くしこってる。大丈夫、気にしないでとはとても言えそうにない。そんな思いで俯いてると不意に誰かがぎし、とスプリングを鳴らしてベッドに乗ってきた。わたしが反応して顔を上げるのと、すっぽりと両腕で抱きかかえられてぎゅっと胸に顔を押し付けられるのがほぼ同時だった。
がっしりした、肌が剥き出しの胸。筋肉質で力強い腕。これは長崎くんだ。
「…ごめんね。眞名ちゃん」
その喉が震えているのがぴったりくっついているわたしにはわかる。息を潜めて身体を強張らせていると、彼は独白のように低い声で続けた。
「眞名実ちゃんが何もかも任せてくれたと思って。これで君は俺たちのものだ、好きにしていいんだって思い込んで。だから思いきり眞名実と愉しもうって浮かれきってた。…だけど愉しんでたのは俺たちだけだったんだ。眞名実は一人で置き去りで、怖くて悲しかったんだな。…辛い思いさせてごめん」
…その瞬間、思ってもみないことが起きた。完全に凍てついたはずのわたしの心が柔らかく震えるのを感じた。どっ、と何かが溢れて決壊した。
わたしは長崎くんの背中に両腕を伸ばして懸命にしがみついた。喉の奥から込み上げてくる熱いものを抑えられない。顔を胸に押しつけたままわたしは肩を震わせてしゃくり上げた。
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