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声を出して泣くなんていつ以来だろう。もしかしたら幼稚園とか、それくらいじゃないかな。いい歳してみっともないと思うけどストッパーが外れたみたいに全然止めようがない。わたしの泣き声が高まると、長崎くんの胸が忙しなく上下した。
呼吸が止まりそうなくらい力を込めて抱きすくめられる。わたしもしゃくり上げながら夢中で彼に身を寄せ、縋りついた。まるで世の中に頼れるものがほかに何一つないみたいに。
頭や肩をそっと撫でる他の二人の手のひらを感じながら、わたしは何とか言葉を絞り出そうと努力した。
「…すごい、嫌だった。辛かったの」
「うん…」
長崎くんが低い声で呻くように頷く。喉がどうしようもなく痙攣して変な声しか出ない。それでもどうしても今吐き出してしまいたくて、わたしは必死で縺れる口を何とか動かして伝えようと頑張った。
「あんな、風に。…一人きりで。放っとかれて。…冷たくて、血の通わないもので。無理やり感じさせられて。…離れたとこで、近寄ってもこないで。ただひとりでびくびくいかされてるの観察されるだけ…。あんなの全然気持ちよくなんかない。身体が、反射的に反応してても…」
「うん。…うん」
長崎くんがしきりに頷いて、宥めるようにわたしの剥き出しの背中を撫でる。上林くんと高松くんもベッドに乗ってきた。二人ともわたしの手を握ったり頬の涙を指先で拭ったりしながら黙って話を聞いている。
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