【バレンタイン狂詩曲】

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「……さすがに帰るか」 樫くんが帰ってから早や一時間、時刻はあっという間の21時すぎ。 ちらほらと残っているのはバレンタインなんかあんまり関係なさそうな既婚者ばかりで、 特に急ぎの案件もない週半ば、さすがに私もやることが尽きてきた。 ……上原さんは、 もちろん帰って来ない。 いや、別に分かってたからいいんだけどね。 いつもお世話になっているお礼、なんて名目で風雅堂のバレンタイン限定、濃厚チョコプリンが給湯室の冷蔵庫にスタンバイしてあるけど。 明日出社してきた時に食べてもらえればいいんだし。 別に今日、上原さんの顔を見てないから寂しいな、なんて思ってないし。 あわよくばで一緒に帰れれば良かったのに、なんて思ってないし。 「……帰ろうっと」
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