【仕事は続くよどこまでも】

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「樫くん、ヨダレ垂れてるよ」 「おっと」 「篠村センパイ、目の下のクマ、やばいです」 「えっ、ホント!?」 ぐったりとうなだれている樫本篠村コンビのデスクにコーヒーを置いていく。 3月初旬。 年度末のビックウェーブ到来。 ただでさえ忙しくて目が回りそうな、この時期。 官公庁、つまりお役所の予算使いきり、業者イジメみたいなちっちゃな仕事が(おっと本音が)舞い込んでくる。 うちの社長のように業界の横繋がりを大事にする良心的な会社だと、各社をたらい回しにされた、 クライアントの扱いが面倒な上に、お付き合い(サービス)案件がこれ幸いとばかりに押しつけられる。 「別にどうでもいいんですけど、この『こども園エントランス壁面、アート作品(20㎡)』って何なんすかね。 何を置くか、誰に依頼するかでピンキリなのに」 「樫くん、素敵な作品、適当にちゃちゃっと描いてきなよ。そしたら経費ゼロで予算浮くし」 「篠村さんヒドイ!俺の作業には予算計上されないんですか!?」 姉弟漫才か、と突っ込みたくなるような二人をよそに、私は気が重いままフロアの奥へと進んだ。
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