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「なるほど、そこまで計算された提案だったんですね!とってもシンプルで素敵です!!ぜひ、この案でお願いしたいです!!」
……嘘つき。
今まで見たことのないような上機嫌で頬を染める目の前の女性に、私の貼り付けた笑顔がピキピキと音を立てる。
この間はどこの大学出身なの?って名前まで出して、センスないわね、って言ってたくせに。
「顔」
と上原さんは正面を向きながら私の肘をコツンとつついてきた。
分かるけど、今までの打合せで重ねてきた努力は何だったんだろうって、毒づきたくもなるじゃないか。
「色々とご迷惑をおかけして申し訳ありません、私も出来る限りのフォローはしていきますが」
「そうですね、お客様の求めるブランドイメージとデザイナーさんの感性の違いは否めませんが。
上原さんがこうしてお手伝いして下さるならもう安心ですわ、本当にありがとうございます」
「いえいえ」
ガッシリと両手を包み込まれても平然と微笑む上原さんを隣からぼんやりと眺める。
さすがだな、あれだけ趣味悪いだのダサいだの、ボロクソ言ってたくせに。
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