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なんかそれって、
「……見栄張ってるみたいで嫌なんですけど」
「だからー、例えばの話だよ。アプローチ次第で仕事がうまく回るなら、自分の小さなプライドなんか捨てた方がラクだろ」
「買ってくれる人もいないし」
「あはは、可哀想。って俺もだけど」
だったら私は上原さんに貰ったリングをしたいけど。
ちらりと隣に並ぶ上原さんの顔を伺い見ると、お互いの視線が重なって私の心臓はバクンと音を立てた。
「ごめん、
俺は買ってやれないや」
「……っ…」
にっこり微笑んで言い放った上原さんに、一瞬、私の息が止まる。
「勘違いだったらごめんね、けど、俺は年も年だし立場もあるし。ナルミちゃんの恋愛対象にはなれないなと思って」
喫煙可能なスペースを見つけた上原さんは、一服していい?と言って、いつもの所作で内ポケットから煙草を取り出した。
「………」
なんだ、これ。
突然の核心をついたその言葉に、私の頭は処理能力が完全にフリーズしている。
ていうか、なんで?
なんで、私は告白もしていないのに、フラれてるんだろう。
「あのさー、睨まないでくれる?」
怖いから、と付け足した上原さんは肩を震わせて笑い出した。
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