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その道冬の両肩を、秋時ががしりと掴んだ。
「子供なのに、自分を犠牲にして我儘の一つもいわねえで、なに大人ぶってんだよ。責められるいわれはないはずだろ」
力任せに揺さぶると、道冬はその手を振り払った。
「でも、すべてぼくのせいだ。父から妻を奪ったのも、瑠奈と玲奈から母親を奪ったのも。それに、ぼくを拾ってくれた先生だってぼくのせいで……!」
ほとんどヤケになったようにまくし立てる道冬が、夏樹にはとても憐れに思えた。なにかいわなければと思うのに、かける言葉が見つからない。
そこに、割り込む声があった。
「そう、きみはまだ子供ですよ」
声のしたほうを見ると、いつからいたのか怜を先頭に、その後ろには莉櫻と美緒までいた。支部長の部下たちとの話し合いは終わったらしい。先の声は怜のものだろう。
「すべてを背負うなど、できるはずがない」
彼が自分の弟子に歩み寄るのと反対に、夏樹と秋時は自然にそこから少し離れた。
「先生。いまの話を、聞いて……?」
「盗み聞きするつもりはなかったのですが、邪魔するのもどうかと思いましてね」
自分を見上げる弟子の頭に、怜は手を乗せた。
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