146人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰が」
夏樹は念のためにもう一度聞く。すると、問われた少女は真っ直ぐに夏樹を見上げて答えた。
「わたしが」
目の前にいるのは、かつて夏樹の同僚だった男、金子光敏(かねこみつとし)の娘だ。そして彼女、愛利は夏樹の昔なじみでもあり、いまは通っている通信制高校の同級生でもある。
愛利には霊感があり、調子がいいときは鬼も鬼憑きの印も視える。だがいつも視えるわけではない。だから、たとえ色々な事情で組織に加わることになっても、実行部への配属はないと思っていたのに。
「わたし、夏樹くんと一緒に戦いたいの」
他ならぬ彼女自身が、それを望んでいる。
(落ちつけ)
夏樹は動揺した自分にそういい聞かせた。細く息を吐く。
廊下には朝の気配が満ちていて、いっそ清々しいくらいだ。その空気を肺に取り込んでから、夏樹は改めて愛利を見た。
「愛利の霊感は不安定なんだろう? 視えたり視えなかったりのおまえに、鬼を捕捉して動く戦闘員が勤まるとは思えない」
最初のコメントを投稿しよう!