兄弟対決

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『この馬はいつもこうだよ。騎手の岡部も苦労してるみたいだしな。』  まともに競馬なんか見た事は無かったが、宇都宮競馬場には何度か足を運んだ経験はあり、当時の私でもその程度の会話が出来る知識はあった。  ビワハヤヒデは素人の私が見ても判る程、鞍上の岡部幸男ジョッキーが、必死に手綱を抑えていた。  短距離ならまだしも、宝塚記念は2200m…しかも最高レベルのG1の位置付けだ。  あんな折り合いを欠いた状態で、とてもゴールまで持つとは思えなかった。 『…ふぅ(所詮馬畜生…やっぱり競馬はつまんねぇな…どうせ、ゴール前失速して負けんだろ…)』  兄貴の解説を聞きながらも、当時の私は失礼ながらそんな事を考えながら、仕方なくレースを観ていた。  ところが…  ビワは3コーナーを回って先頭に立つと、直線に入り後続を突き放しに掛かる。  差は開くばかりで、結局二着のアイルトンシンボリに5馬身差を着けゴール板を駆け抜けた。 『な!強ぇだろ!』  そう兄貴が言うように、一発で魅了された。  それからは、競馬に夢中である。  先ず、ビワハヤヒデについて可能な限り調べた。
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