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「よお、久しぶり!元気してたか」
達也が拳骨を差し出すと、大樹も拳骨をぱしんと合わせた。
かつての六人が勢ぞろいすると、みんな口々に再会の喜びを交わした。
「遅かったな。トロッコに乗ってまたどこかに消えたかと思ったぞ」
達也は大樹の肩を軽くつついた。
「遊覧船の貸切り手配に思ったより、時間がかかってさ」
湖の観光遊覧船乗り場を見ながら大樹が答えた。
「貸切り手配ってなんだよ」
「栗村爺さんの暗号がやっと解けたんだよ。あの爺さんタダものじゃなかったぞ。なにしろ筆圧と明度まで駆使してたしな。しかも二重三重のトラップがあって・・・まあいいや、そんなのは」
「筆圧とかメイドって何?」
「要は、お宝のありかが分かりそうだってことさ」
「おお」
「だけど、そこには辿りつけない仕組みになってる」大樹はそこで言葉を区切り、みんなを見回した。「行こう。船を待たせてるから」
船着き場は展望台から少し離れた場所にあった。
白い帆船をイメージした大型の遊覧船と少人数用の小型船が就航している。
二隻の船体は展望台からも見えた。
船のまわりは乗船客たちで混雑しており、案内アナウンスも頻繁に流れて賑やかだ。
「あの小さいやつに乗る。就航時間と就航時間の合間を特別にお願いしたんだよ。悪いけど、急いでくれ」
大樹がぱんぱんと手を叩いた。
「ちょ、昔とちっとも変ってねえなあ」
達也が苦笑いしながらも速足になった。
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