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私は感慨深い気持ちで
目の前で怒る志藤くんを見た。
優しい熱と
確かな痛みが同時に生まれ
それらをギュッと
胸の中に閉じ込めるようにして
笑った。
「そっか……
温人さん、そんな風に見えてたんだ」
「おい。俺の声聴こえてるか?」
「それなら私も
ちょっとは結婚てものを
実践出来てたのかもしれないね」
「実践て、色気のない言い方だな」
でも、足りなかったんだろう。
自覚して出来ていたわけじゃないから
さもありなん、だ。
「あのねぇ、志藤くん」
「なんだ。まだあるのか?
いい加減帰る……」
「温人さん
昨日、帰ってこなかった」
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