282人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ……
俺んち来る?」
火照った指先に
何かが触れた。
耳に膜が張られたように
音がぼやけて聴こえる。
「この店、俺んちの近くだって
わかっててお前もついて来ただろ」
「んん……なんて?」
「俺んとこに逃げてくるのも
アリだと思ったんじゃないのか」
志藤くんが早口で
何か言っている。
指先が暖かい。
火照りとは違う、
温もりに包まれている。
「なんて、
こんなクズみたいなセリフ
言うつもりじゃなかったんだけどな……」
「しとーくんは、クズじゃないよー」
「じゃあ、来るか?
捨てられたなら、俺のとこに来いよ」
「んー……」
捨てられたって、
聴こえた気がする。
そうか、やっぱり私は捨てられたのか。
最初のコメントを投稿しよう!