幸せの結び方

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閉じかけていた瞼を ふと持ち上げた。 ぼやけた視界の向こうで 骨ばった手が スマホを操作している。 真っ赤なカバーがかけられたそれは……。 「しとーくん、まちがってる」 「ん?」 「それ、たぶんわたしの……」 志藤くんのスマホは 確か黒で、カバーはなかった。 「間違ってないよ」 そっか。 間違ってないのか。 志藤くんはしっかり者だから 間違うわけないか。 ずっと間違ってばかりの 私とちがって。 頭上でカシャリと 聞き覚えのある電子音が 聴こえた気がしたけれど 今度こそ私は 眠気に抗うことが出来ず、 重い瞼をゆっくりと下ろしていった。
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