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――手も足も、氷のように冷たくなってしまいました。
母の声を、私はどきどきしながら聞いた。
いよいよ泣き出しそうな少年は暗い森の中に小屋を見つける。森をグルリと回って、自分の家に帰ってきたのだ。そのときに少年の見た光の温度を、私は自分で見てきたかのように覚えている。思わず涙が出そうになるほど安堵する、その瞬間が大好きだった。
少年が誰にも渡せなかった箱をお祖母さんに差し出すと、
「素敵なプレゼントをありがとう、ぼうや」
彼女はにっこり笑って箱を受け取り、次の頁で少年は暖かな食卓にお祖母さんと二人で座っている。シチューとパン、少年の為のプレゼントが机の上に並んでお話は終わる。
幸せに終わった物語、頁を閉じた後に少年はどうなるのだろう。初めて疑問を抱えたのは、母の膝を妹が占めるようになって、絵本を横から覗き込むようになった頃だったろうか。
いつからか脳裏に浮かぶ想像は一つになっていた。つつましやかな晩餐は終わり少年は眠りにつく。翌朝目覚めた彼の前には一面の雪景色がある。物語は終わってしまい、目の前には何もない。誰が現れることも、暖かな家も、樹の一本すらもない。少年は途方に暮れて立ち尽くす。
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