真綿の服 岡田岳陽

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真綿の服 岡田岳陽

 パンをあっちからこっちに移動する仕事をしていた。正方形のサンドイッチを三角形に切り分ける機械がハムサンドを吐き出してくる。それを別のコンベア、ビニールシートの上に載せ直す。そうすると流れていった先でサンドイッチはパックされてコンビニに並ぶ形になる。  短期バイトの男の子が来なかったので、勤務時間が延びてしまった。アルバイトが来なくなることはよくある。 「単純作業が全て機械化されないのはですね、機械の方が人件費より高いからだそうです」  一週間のアルバイト期間の終わりに、そう言い残していった学生もいた。いつもは部屋の隅を見つめながら怯えるようにして口を開く子だったが、そのときだけはにやけた口の隙間から、歯並びの悪い前歯が覗いていた。私は「なるほどそうなんですか」と答えた。  勤務時間が終わった私は上司に休暇の届け出を渡す。四角い眼鏡の向こうから、このおばさんは誰だったか、という視線を向けた後彼は、 「その時期は困るなあ鈴木さん」  私は、それなら仕方ありませんねと引き下がって帰路につく。明日になったら妹に電話をしなくてはいけない。     
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