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灯台のシクンシ 近田涼馬
親愛なるメアリーへ
こんにちはメアリー、元気かい? 君のことだからきっと元気だろうね。
パパは今、貨物船ナローニック号の船室で手紙を書いているんだ。この手紙が君に届くのはいつ頃だろう? とにかく今日は一八九三年二月十一日、時刻は午後八時五十分。そう、君が港でパパを見送ってくれた日の夜に、パパは君へ手紙を書いているってわけさ。君も知っての通り、海の上から手紙を書いて出すなんて初めてのことだよ。ちゃんと君の所に届くといいけれどね。何せ船の上では電話を使うことができないんだ。でも、もう何年かしたら船の上で無線通信というものが使えるようになるかも知れないと言われている。つまり、電話線がなくても遠くにいる人と話をすることができるようになるってことさ。もしそうなったら、どんなに遠い海の上にいてもパパは君とお喋りをすることができるんだ。どうだい、素敵だろう?
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