6人が本棚に入れています
本棚に追加
ところで、イングランドからアメリカまではかなりの長旅だ。ニューヨークっていうのは凄く遠い所なんだよ。だけど心配することはない。天気はいいし船の具合も上々、おまけに仲間の乗組員やお客さんもみんないい人たちだ。食事だけはちょっといまいちだがね。何にせよ、今回も順風満帆の航海になりそうだ。ただ、ニューヨークに着くのは待ち遠しいね。あそこはとっても楽しい町なんだ。君も大きくなったら、いつか船に乗せて一緒に連れて行ってあげよう。
それはそうとメアリー、家ではいい子にしてるかい? 元気なのはいいことだが、パパがいないからといってはしゃぎすぎて、伯父さんや伯母さんに迷惑をかけてはいけないよ。いいね?
さて、まだまだ書きたいことはあるけれど、今日はこの辺にしておこう。暇があればまた手紙を送るよ。
クリスより
◆
その年は寒かった。少し前に夏が過ぎ去ったばかりだというのに、冷たい風が時折吹き抜けては辺りの船や建物から熱を奪っていく。心なしか、港で働く人々も例年より厚着をしているように見える。それは、灯台の中にいるジョニーも同じだった。
灯台の窓を拭きながら地面を見下ろすと、貨物倉庫の向こうから青年が駆けてくるのが見えた。それが甥っ子のチャールズだと分かると、ジョニーは手を止めて時計を一瞥し、青年に向かって声を張り上げた。
「遅刻だぞチャールズ! 十八時に交代だと言っただろう! 何分待たせる気だ」
チャールズはびくっと肩を震わせて立ち止まったが、怯むことなく灯台の上部へと大声を返す。
「悪かったよジョニーさん! でも遅刻ったって、たかが二、三分だろう?」
最初のコメントを投稿しよう!