灯台のシクンシ 近田涼馬

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「馬鹿野郎。港を出入りする船にとっちゃ一分一秒が一大事なんだ! 前にも教えただろうが」  チャールズは、怒鳴るジョニーの傍らに空き瓶があるのを目敏く見つけ、不満げな顔で言い返す。 「生憎だけど、仕事中から一杯やってる人に説教されたくはないね」  だがジョニーはさして気にも留めず、ただ鼻で笑った。 「何が悪いんだ。灯台守なんて退屈な仕事、酒でもなきゃやってられるか」  チャールズは呆れ顔で灯台に入り、短い階段を上がってジョニーの横に並んだ。 「そう退屈な仕事とも思えないけどな。この港はそんなに船の出入りが少ない所でもないし、大抵忙しいだろう?」 「どうだか。俺からすりゃ、日がな一日同じ場所にいる仕事なんざそれだけで退屈だね」 「でも、毎日色々な船が入ってくるのを眺めていられるなんて、僕なら楽しいと思うけどな」  半年前に就職を果たしたばかりの新人灯台守チャールズが呟くと、職歴二十年以上のベテラン灯台守ジョニーは冷ややかに答える。 「そう思っていられるのも今のうちさ。俺はもう見飽きちまって、どんな船が入港してきたところで珍しくも何ともない。もっとも、伝説のナローニック号が帰ってきたりでもしたなら話は別だがな」 「ナローニック号? 何だい、それは。船の名前?」 「何だお前、知らないのか。新参者め」     
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