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おずおずと声をかければ、頭は机に伏せられたままで店員の方へと少女の首が向けられた。頬が机の天板にぺちゃりとつけられたままの彼女の目と視線がかち合う。失礼ながら、思っていたよりも彼女の顔立ちは美人でも可憐でもなかった。普通である。
「……何か?」
「い、いえ。あなたが食べているところを見ていなくて、このままだと連れの方が食べきってしまうのでは、と」
睨まれてびくりと跳ねかけた肩をおさえつけ店員は少女に問いかけてみた。ここの食事は美味い。店員である自身は胸を張って言える味だ。
男性のいい食べっぷりも見ていて気持ちがいいが、出来れば少女にも食べてみてほしい。食べられないものでないのなら来た人には一口は食べてみてほしい自慢の料理だ。
もしかしたら彼女が叫んで机に突っ伏したのは、連れの男に好物を食べられたのかもしれない。皿は既に何枚も積み重ねられているのでどの料理かはさっぱりわからないが、何かいるかと尋ねても首を振られてしまった。
「料理は大丈夫。私も頂いてるわ」
「追加していいなら頂きますが」
「レイルは昼食をこれ以上とらないで、見てるこっちが胸焼けするわ」
レイルと呼ばれた連れの眼鏡の男は、ほんの少し残念そうな表情を浮かべてまた食事の続きに戻っている。ナイフとフォークは滑らかに動き続け、次から次に彼の口へと食事が運ばれていく様はなかなか面白いものがあった。
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