五階での話(みー)

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 との回答を頂戴し、自分の勤めていた会社はブラックだったのだとその日二度目の気付きをした。それから、会社の引き留めを振り切って辞表を出し、飛鳥の推薦もあったことで晴れて同じ会社に勤めることとなった。その会社に勤めてからは、ああやはり前の会社はブラックだったんだなぁと後からしみじみと思った。かくして雄太は飛鳥の部下として働くこととなった。働くにあたって、 「通勤に乗り換え三回はさすがに面倒だと思い始めた……」 「俺も通勤に一時間半掛かっちゃうんだよね……。……ね、どっかに部屋借りて一緒に住まない?」 「俺も今そう言おうかと思っていた」  というわけで、乗り換えも少なく通勤に前ほど時間のかからない、ほどほどによい立地のマンションでの共同生活が始まった。  思い起こしながら雄太は冷凍庫を確認し、魚の切り身を出す。フライパンにシートを敷き、その上に切り身を二枚並べて焼いていく。今日は何をかけて食べよう。やっぱり塩かな。隣のコンロでは、目分量で水を張った鍋に適当に選んだ調味料と冷凍つみれをごろごろ沈めて、あくを取りながら火にかける。あとは今日買ったいかの塩辛を出せば夕食の大半が出来上がり。飛鳥が浴室から頭を拭きながら現れた。 「上がったぞ」 「はーい。味見してないから飛鳥が適当に整えてほしいな~」 「お前また適当に作ったのか……まぁいい。俺に任せて早く風呂行ってこい」  ありがと~、とへらへら笑いながら、雄太も飛鳥同様、浴室へと向かった。  雄太は適当に料理を作っては、謎の料理を完成させる事がたまにある。基礎は出来ているようなので、味が悪くなることはあまりないのだが、同じ味を再現するのは難しい。ちなみに得意料理は煮物だと豪語している。なぜなら〝鍋に色々突っ込んでぐつぐつするだけ〟だからだそうだ。飛鳥も料理は苦手ではないのだが、大体魚一択である。味は魚料理を極めているほどに美味いのだが。共同生活を初めて最初の食事で「他のもの食べないの? 貝とか」「貝とかあったな……」と存在を忘れるほどに魚一択であった。そういう点でも、交代で食事を作るのはちょうどよかったのかもしれない。 「ほかほか~」  飛鳥の半分以下の所要時間で、雄太が浴室から出てくる。フライパンの上で空腹を誘う音を立てる切り身をじっくり焼きながら飛鳥がそちらを見遣る。 「いつも思うが風呂速すぎないか」
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