四、拒絶

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 自分は一体何をしようとしていたのだろう。離れた今も、気を抜くと視線が瑳和の手首に引き寄せられそうになる。そんな自分を隠すことに精一杯だった。  瑳和の顔がまともに見られない。 「真布由」 「やだ。来んな……」 「近づかないから俺を見て」  そんなの無理だ。真布由はただ必死に首を振った。見てしまえば、この衝動を抑えきれなくなってしまう。 「俺を見て」  瑳和の言葉は抗いがたい強さで直に脳内へと入り込んだ。傷口を見ないように、慎重に顔を上げていく。  瑳和の顔がホッとしたように緩んだ。  瑳和は、ゆっくり、ゆっくりとしゃべり始める。 「布由、近づかないほうがいいのなら近寄らない。でも、俺は話がしたい。何が起きたのか、布由が何を考えているのか、何を思っているのか俺は知りたいんだ」 「……」 「多分、それは布由が知られたくないことなんだろうけど、それでも聞かせて欲しい。このまま布由が何も言わずに俺から離れて行くのなら、俺は布由を離したくはないから無理にでも捕まえるよ」  瑳和の声は穏やかで優しかったけれど、そこには強い決意があった。 「だから教えて。布由のことが知りたい」  もう、逃げられない。不自然なほど喉が渇いていた。唾を飲み込もうとしたけれど、それは奇妙な音を立てただけでなにも喉を通過しなかった。  首を横に振る。     
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