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本棚に追加 いつ頃からだっただろう。自分がリルフィムであることに、とてつもない嫌悪を抱いたのは。リルフィムで、さらに希少な純血種だということが嫌で嫌で堪らなかった。今思えばあれも一種の思春期のなせる業だったのだろうとは思う。
中学生になったころから自分の周りには人が集まるようになった。初めは友だちがたくさんできたと思い、ただうれしかった。
それでも、あるとき気づいてしまったのだ。彼らは真布由という個人に近づいているのではなく、リルフィムの純血種というブランドに近づいているのだということに。
気付いた瞬間、一気にいろいろな事が冷めていった。他人からの視線が堪らないほど鬱陶しくなった。
他人との関わりを避け始めたとき、思い出すのは幼少期に離れてしまった瑳和のこと。あの時、別れることなくともに成長していたのなら、今も変わらず友人として過ごせていたのだろうかと、どうすることもできない「もしも」に真布由の思考は支配されていた。
このときが真布由にとって瑳和に会いたいと切実に願ったピークだった。
別れたときの瑳和は十一歳。リルフィムとノーフィムの関係性をほぼ正確理解している年齢だ。真布由の家族とも親しかったのだから、純血種についてもそれなりに知っていただろう。
知っていてあの約束をしてくれたのは「真布由だったから」なのか「純血種だったから」なのかわからなくなってしまった。
瑳和に対して疑心を抱いてしまったそのときを境に、あれほどまでに会いたかった瑳和に会いたくなくなってしまった。
怖かった。
もし自分が覚えている瑳和とは違っていたら、自分はきっと立ち直れない傷を受けてしまう確信があった。
それならいっそ、このまま宝石のように美しい記憶のままがいい。
予想外の再会を果たした瑳和は、見た目は随分と変わったものの話し方も表情も、身に纏う空気さえも記憶のままだった。
それでも、もうあの頃のように無邪気に手をのばすことはできなかった。
疑ってしまった自分が、信じきれない自分が、瑳和に近づくことを禁じた。
失望させてしまう恐怖。
失う恐怖。
初めから何も手に入れなければいい。そうすれば今のまま、もう傷つくこともない。

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