序章 浅草六区の「楽々座」の面々

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車椅子に座っているのは 野々村 喜佐治 まあ 美々ちゃんのおじさんですね 彼は 元々 とある劇場の大看板  奥山時代から 人気を 誇っていた 軽業系漫談師(まあ いろいろと芸事をこなすスーパー芸人)だったのだが  火事に巻き込まれて 美々ちゃんのご両親 そして自身の右足を失うことになってしまいました。 しかし 彼の芸に惚れ込んでいた ご贔屓筋のお江戸の旦那たちに より 奥山の外れに 「楽々座」を持たせてもらい 現在にいたるってわけでして 彼の芸に対する心意気は 浅草六区一と自負しているそうだが はてさて 「横転さん ダメだよ うちの看板娘をいじめちゃあ」と 怒っているように見せて 実は そうでもないところは 人柄から 染み出ていて 「喜佐治座長 いじめられてんのはおいらの方だい」と叩かれた 顔を 見せれば  あれまぁ 確かに 平手打ちのあとがくっきりと それには 付き人よろしく 車椅子を押していた 木戸番の木所君「あはは 確かに 横転師匠 お顔にくっきりと紅葉のあとが。あはは」と大笑い 美々ちゃんのために抗議に来た野々村氏も「ふふはああ いやあ まあ あの子もな 口は悪いが 悪気はないんじゃから」と言うものの 「口は悪いが 手も早いってくらぁあっと でえじょうぶ でえじょうぶ 惚れた女にひっぱたかれりゃ 男なんざ 嬉しいんだからよぉ」と なんとも どこまで本気なのかは 神と彼のみぞ知るってなわけですかね さてと あとは座付きの芸人たちをば 紹介しておきますかね
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