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それを鳴らしていたのはあの娘。
私と同じように叶多くんの事を好きな、あの娘。
一瞬動くのに躊躇いがあった。
さっきのあれ……聞かれてないわけ、無いよね……。どうしよう。
私の口から弁解した方がいい?少しだけ体が強張り躊躇してしまった。
レジ前に立つお客さんを叶多くんも同時に見ていたのだろう。
「俺が出るから良いよ」
手についていた泡を洗い落として、待たせていた彼女の元へと足早に駆け寄っていく叶多くん。
その二人のやり取りを見るのが怖くて、私は叶多くんの作業の続きをし始めた。
ただ、それだけに専念する。
自分のせいで叶多くんの恋を邪魔してしまって、私の胸には喜びと罪悪感とが同居し二つは激しく議論している。
やがて罪悪感の方が勝ってしまったのか。
彼女に申し訳ないという気持ちが、私の胸に広がっていった。
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