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駅まではそう遠くない。
疲れた顔のサラリーマン、ライブ帰りの若いカップル、高飛車な化粧濃いめの女、個性豊かな人々に混じり、花耶とぎこちない距離間を保って歩く。
「仲吉さんに、怒られないですかね。
有本さんと2人で帰って」
仲吉と細石が無事に家に帰れるかを話していると、そんな事を聞いて来た。
寒さのせいか、声が弱々しい。
何の心配をしているのか全く分からないので、なんで? と明るく聞き返す。
「え、いやだって、お付き合いされてるんですよね?
下の名前で呼び合ってるし、それに、とても親しそうで......」
俺と理沙が付き合ってる? 一体何がどうなって、そんなことになるんだ。
とんでもない誤解に顔を強張らせると、苦笑いだった彼女は隠れたつもりか、マフラーに顔の半分を埋めてしまい、目元しか見えなくなってしまった。
「いやいや、違うよ。
あのコ、仲吉って呼ばれるイヤなんだって、昔よくダジャレにされてたらしくて。
フハハハ、だから下の名前で呼んでるだけ」
「そう、ですか......」
埋もれて籠った声は、とても小さかったがハッキリと耳に届いた。
視線を外した彼女を横目で一瞥すると、間違えた恥ずかしさからだろう、耳が真っ赤になっていた。
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