不思議な偶然

27/42
前へ
/447ページ
次へ
ハハハ、と屈託のない笑顔があまりにも眩しくて、反射的に目を逸らしてしまった。 「有本さんの家の近くにはありますか? イルミネーション。 あ、その前に家はどちらですか? 何駅ですか? 」 「ちょ、ちょっと待ってよ。質問多いって」 「あああ、ごめんなさい、フフッ」 肩を竦め、背筋を正して笑う花耶。 急なテンションの舞い上がり様も、恥ずかしそうで楽し気な表情も、たまらなく可愛い。 このままでは鼻の下が伸びて情けない顔を(さら)してしまいそうなので眉を寄せて困った表情を作る。 自分なりの誤魔化しをしてから彼女に微笑み、「えっと、なんだっけー?」と話を戻す。 「イルミネーションは全然ない、街灯だけの悲しい道だよ。 駅は6つ目の寄橋中央です。新堂さんは? 何駅?」 「え、っとー、私は、その次です。 その次のーー、駅ですね、はい」 「ふーん、日和3丁目なんだ、結構遠いんだね」 「......はい、まぁ。 でも、乗り換えなくていいから楽ですよね」 揺れる電車、足の温もり、頬は火照って脳は有頂天。 夢見心地の巧を乗せて、外の景色はグングン流れて行った。
/447ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加