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「なーに笑ってるのー?」
「へ? あいや別に」
翌朝。パソコン画面を見ながら口元を緩ませていた巧、小村に声をかけられ、我に返った。
経理部へデータ送信をしていると、思ったよりも時間がかかり、ボーッとしてしまった。
どうしても昨日のことが頭から離れない。
降りる駅が近付いてくると、会話はペースダウンし、口数が減ってしまった。
目の前の乗客達がいなくなると、花耶と横並びに座る自分の姿が正面のガラスに映った。
揺れる度に肩が擦れ合う距離に、束の間、仮想カップルの彼氏役を演じることが出来、とても幸せな一時だった。
「細石さん、これここに置いておきますね」
「お、ありがとー、助かるよ花耶ちゃん」
頼まれていたコピーを終え、花耶が戻って来た。歩く度に香る甘い匂いが、周囲の空気を美しく彩る。
スーッと鼻から大きく息を吸って、また微笑んでいると、仲吉がメモ用紙を滑らせるように送ってきた。
「巧先輩、ルーシャルプルゼのイベント、会場決まりました。
今年も笹道パークの体育館貸し切りでやるみたいです。連絡事項まとめておいたので、後で担当者に直接、確認お願いします」
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