不思議な偶然

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理沙、張り切ってるなぁ。と、笑いそうになるのを堪え、ありがとう、と言った。 「もうそんな時期なんだな、早いな」 “ルーシャルプルゼ” と聞くと1年の終わりを感じる、もうこの時期が来たかと。 有名な宝石ブランドで、毎年クリスマスが近付くと2日間限定で破格の販売イベントを行っている。 新堂商会もこのビッグイベントに(たずさ)わっており、営業開発部は長時間に及ぶ数回の会議で展示テーマや展示物の配置などを決めていく。 その会場設営に必要な物は全てこちらが手配しており、搬入から設置、当日の運営スケジュールなど、様々な工程を、各部署総出で取り組む。 当然、業務部もこの時期は1年で最も忙しくなり、毎年、皆で音を上げている。 だが、今年は大丈夫そうだ。 細石は花耶を意識してか、全然トイレに行かなくなったし、その分、小村が余計なサポートをしなくて済むので、いつもの倍近いスピードで業務が進んでいる。 仲吉はイベントに客として参加したい為、精密機械と化し、アナウンサーも顔負けの滑舌と、強引な進行で、迅速に仕事を終わらせてくれている。 全体的に雰囲気が良い。 それはきっと花耶のお陰だと、巧はまた嬉しくなった。
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