不思議な偶然

30/42
前へ
/447ページ
次へ
「あーあ、長いよ、話が.....。肩凝ったぁ」 来年度販売の新商品に関する会議が思っていたより長引き、オフィスに戻った頃には、従業員の姿はほとんどなかった。 残りの仕事を手早く済まし、本日の業務終了は21時を過ぎた頃だった。 確か今日、音楽学園特別編にパンクロックバンド“MUSIC BANANA GARLS”が出るのに見れなかったな、あ、でも動画サイトで見ればいいか。と小さな一喜一憂をしながらエレベータ―を降りた。 午後20時以降は一切仕事をしないエスカレーターを横目で睨みながら階段を下り、ロビーからエントランスへ。 自動ドアが開くと同時に気合いを入れて、いざ、極寒へ。 寒さを感じる前に、寒っ、と口にしてしまうほど冷たい風に顔を歪ませていると、 「お疲れ様です! 有本さん」 突然、真横から足を踏み出してきた人物がいた。 声の主に、目を疑い、呼吸を止めてしまった。 「え、どうして。あ、え? 何してるの?」 そこにいるのは真っ赤な鼻をした花耶。 堪え切れなくなったクシャミを、小さく上品にしてから、子供のようにヒヒッ、と笑った。
/447ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加