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――ゴミ箱には人が宿る。
オフィスビルの清掃を初めて半年、最近はそんなことを思うようになってきた。
足音を吸収するタイルカーペットが敷き詰められたオフィス。
向かい合わせに並列したデスクの下に、同じ形をした黒いゴミ箱が点々と並んでいる。
午前7時。
まだ誰も出社していないこの時間に、若い女が一人でゴミを集めているなんて、きっと誰も知らない。
「......うわ、勿体ないなぁ」
賞味期限切れだろうか? 全く手の付けられていない菓子パンがそのまま捨てられている。
その隣のゴミ箱にはA4サイズの紙がビリビリに破られていたり、クシャクシャに丸められていたり。
対照的に、その奥のゴミ箱には同じサイズの紙が折り目1つ付いていない状態で大量に捨てられてあった。
ボーッとしている人、気性の荒い人、几帳面で冷静な人。
ゴミ箱を見るだけで、何となく人物像が浮かぶ。ゴミ箱には人が宿っている。
「......よいっしょと」
オフィス奥、ブラインドの下りた窓の前、濁りガラスのパーテーションに遮られた4つのデスク目指して、手に持ったゴミ箱を次々に逆さまにしていくと、スカスカだったポリ袋はあっという間に膨らんでいった。
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