幸せの温度

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 いつもよりも一時間早く起きて、今日は弁当の準備をする。葉月の運動会に使うランチボックスを引っ張り出し、おにぎりは別でおかずを作っていった。定番の唐揚げに玉子焼き。 「あとは、カリフラワーとブロッコリー茹でて、野菜が足りないか。きんぴらも作ろっかな……」  昨日のうちにある程度の下準備は終わらせていたけれど、まるで遠足前の小学生のように浮き足立つ気持ちが抑えられない。  最近色々あっただけに、陽と葉月と出かけられるのは楽しみだった。それに、あの制服の一件以来、何もなかった。  ハッと我に返り時計を見上げる。次から次へとあれもこれもと考えてしまって、時間ばかりが過ぎていく。 「あ……ヤバ、葉月起こさないと」  窓の外を見れば、薄っすらと明らむ空がある。混雑を避けるために早めに家を出ると言っていた。もう起こさねばならないだろう。  コンロの火を止めて、ある程度をランチボックスの中に詰めていく。出来上がった料理だけでも、弁当箱の中はいっぱいになった。あれもこれも入れる余裕はない。  葉月の部屋を開ける。部屋は遮光カーテンがかかっており、中は真っ暗だ。まずはカーテンを開けて、太陽の光を部屋に入れた。 「ん……に、いちゃ……?」  眩しかったのか、葉月がゴロンと寝返りを打ち薄っすらと目を開けた。 「おはよ……動物園行くんでしょ? そろそろ起きて」 「どうぶつえん!」     
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