幸せの温度

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 結局持ち帰った制服は、ビニール袋のまま陽に渡してある。自分で洗うのも嫌でどうしようかと思っていたから、多分燃えるゴミの日にでも捨ててくれたのだろう。新しいシャツを注文し待っているところだった。 「やっぱり……警察とか、少なくとも先生には言った方がよくないか?」 「そんな大袈裟にしたくないよ。制服だって、ほんとにアレ……かどうか、確認してないし。ほら、糊とか付けただけかもしれない」 「だとしても、悪質だぞ……陽さん迎えに来れないなら、俺が一緒に帰ってやる」  帰る準備万端に鞄を持った荒地が、廊下を出た先で立っていた。会話を聞いていて、部活用のスポーツバッグを置いて来たのだろう。 「いや……だって、三年生引退して新しいチーム作りが大変だって、言ってたじゃない」 「どうせ、部活出たってお前のこと心配で気もそぞろになるだけだ。杉崎お前まで休んだら大変だから、俺の代わりに出とけよ?」  やっぱり大変なんじゃないかと、口を開こうとすると大きな手がベシッと顔を叩いた。結構痛い。 「ふ……がっ」 「いいから黙って送られとけ、ほら行くぞ」  荒地のこの強引さは、どことなく陽を思わせる。嬉しいような申し訳ないような気持ちで礼を言うと、杉崎に別れを告げ駅へと向かった。 「陽さんには、ちゃんと言ったんだよな?」  つり革だと低過ぎるのか、荷物置きに手を置き睦月を守るようにドア側に荒地が立つ。 「うん」     
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