幸せの温度

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 保育園の時はなんだかんだと寝汚く、冬は特に布団から出すのも大変だ。しかし現金なもので、動物園と聞いただけで葉月はテキパキと支度を始めた。 「いつもこうだったらなぁ……兄ちゃん朝ご飯作っておくから、着替えて手を洗うこと」 「はあい!」  ビシッと手をあげて、葉月は早朝らしからぬ声を張り上げる。このマンションがそこまで壁が薄いとは思えないから心配ないと思うが、睦月は人差し指を口元に当てる。 「朝早いから、シーだよ」 「はぁい……」  葉月の部屋から一つ空けて続く部屋のドアが開いて、のっそりと陽が顔を出した。  陽が起きるにはまだ早いが、葉月の声に起きたに違いない。昨夜も遅くまでキーボードを叩く音が聞こえていたから、疲れてはいないだろうかと心配になる。 「陽さん、まだ早いですけど……」 「いや、目覚ましておきたいから起きる。葉月の支度やっておくから、お前弁当作るんだろ?」 「はい、じゃあお願いします」  葉月の部屋へ入るのを見届けて、睦月はキッチンへと戻る。弁当に入らなかったきんぴらといくつかの野菜を皿に盛った。  あとはおにぎりを作ろうと、炊きたてのご飯を朝食用によそい、残ったご飯で手際よく海苔に包んで握っていく。     
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