幸せの温度

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 正直、帰りに葉月が疲れて愚図ることを考えれば車が楽だと思っていたが、先日に続いて陽の質問の意図がよくわからない。車酔いをしないことは、陽も知っているはずだが。 「平気……ですけど、こないだも言ってたけど、大丈夫ってどういう意味ですか?」  テーブルについて、朝食を食べながら聞くと、陽は考える素振りを見せる。そんなに言いにくいことなのだろうか。 「一緒に暮らし始めたばかりの頃、お前車ダメだったろ?」 「え……そ、んなはずは……」  陽の車に乗る機会が殆どないため、そもそも一緒に暮らしたばかりの頃車に乗ったという記憶も曖昧だ。睦月がわからないと首を傾げていると、陽が口を開いた。 「数年前まで、青のミニバンだったんだよ。大学のメンツでバーベキューやら何やらで荷物運ぶことが結構あったからな。健吾や那月ともよく出かけてて、うちと同じ車だとか言ってたな。その頃にも何度かお前とも会ったことあんだが、まあ覚えてねえよな」  初めて聞く話だった。かなり仲は良かったと聞くから、小さい頃睦月に会っていてもおかしくはないが、その記憶はない。  確かに、黒岩家の車は青っぽかった。小学生ぐらいの時、父さんの友達と出かけるんだとどこかにいった覚えはある。その時に陽と会っていたのだろうか。  しかしその話が、どう車が平気がどうかに繋がるのかわからない。     
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