幸せの温度

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「可愛いわよ~そりゃあ子育ても仕事も大変だけど、この子が笑ってるだけでいいのよねぇ。充くんもいつか分かるわよ」 「そういうもんか……確かに睦月は可愛いもんな。あ……俺追加の肉取ってくるわ」 「俺たちの車と陽の車同じだから、ナンバーが〝う〟なのが陽のだよ。そっちに肉入ってるから」 「ほんと、何で同じ車なんだよ」 「たまたまだろ」  大人たちの笑い声を聞きながら、すっかり疲れた睦月は陽に抱っこされたまま眠ってしまった。気付いたら、いつもの見慣れた天井があって、布団に寝かされていた。 「睦月くん、葉月くんと一緒に二人を引き取ってくれるって人から連絡があったのよ」  児童養護施設でそう告げられたのは、両親の葬儀から数ヶ月経った頃だった。 〝俺と家族になるか〟そう言ってくれたのを忘れていた訳ではないけれど、まさかという気持ちが大きい。  2×××年に児童福祉法が改正され、収入がある一定以上で過去に前科のない者であれば誰でも子どもを引き取り育てることができるようになった。暴力やネグレクトによって、施設へ預けられる子どもが増える一方で、一生独身を貫くというケースも増え、子どもの引き取り手がなかなか現れない現状を改善しようと、法が改正されたのだ。     
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