幸せの温度

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 大学進学をバスケで決めるぐらいだから、荒地は根っからのバスケバカだ。だから、今の言葉は睦月のことを心底心配してのものだろう。 (ほんと、もう大丈夫だといいんだけど……) 「ほら、葉月荒地のお兄ちゃんにありがとうでしょ?」  マンションの前について、葉月を下ろすように頼むと、背後から男性の声がかかり、肩を叩かれる。 「あの……すいません」  思わずビクッと身体が震えたが、振り返ってみるとスーツを着たヒョロリと背の高いサラリーマン風の男性だった。しかし、具合でも悪いのか顔色は悪く、目がギョロリとし血走っていた。 「はい?」  荒地が葉月に何やら耳打ちすると、分かったと言った葉月が頷いてマンションのエントランスへと向かう。 「俺からのプレゼントはどうだった? 喜んでもらえたかな?」  一瞬何を言われているのかわからずに、考えること数秒。男がシャツと声には出さずに口の形でそう言ったのがわかった。瞬間、身の毛がよだつほどの恐怖が全身に走る。 「てめぇっ」  動いたのは荒地が早かった。睦月はただ呆然と恐怖に立ち尽くすだけで、何も出来ない。ただ、マンションの中に入ったかに思えた葉月が、こちらに向かってくるのが見えて、絶句する。 「荒地っ! 葉月!!」     
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