幸せの温度

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 男がポケットから取り出したのは、大量の写真だった。それらは全て学校内で撮られたもので、数枚は覚えがある。写真部の八田が、しょっちゅう学校内でカメラを持ち歩き撮っているものだ。生徒たちはいつものことと、勝手に撮られていても気にしなくなっていた。被写体となった生徒には写真を配るなりのことをしていたこともあり、皆いい奴だと言っていた覚えがあるが。実は学校内の生徒にも、人気のある生徒の写真を希望があれば売って金にしていたという噂を思い出した。  まさか、外部にまで売って金を稼いでいた、ということか。 「あなた……誰、ですか」  口から出るのは、今この時においては何の意味もない質問だ。ただ、葉月を守るために時間稼ぎになればいいと思っていた。 「え~俺のこと知ってくれるの? じゃあ、いっそのこと付き合っちゃおうよ。相思相愛でしょ、俺たち」  男の顔が徐々に近付き、首筋に唇が寄せられる。再び吐き気が込み上げるが男の手が顔を掴み背けることは出来ない。身体が強張り、震える。誰か助けてと、声を出すことすら出来ずに、されるがままに立ち尽くした。 「あ~やっぱ、すっげいい匂い。やべぇ、ほら勃ったよ。キミの中にズボズボして、気持ちよくするやつ。触ってみなよ」  睦月の手を取り、下肢へと導かれる。男が言った通り、スラックスの前は わかるように盛り上がっていて、その感触に手が震えた。 「やっ……だ」  カチャカチャと外にも関わらずベルトを外し、男は勃ち上がった浅黒い性器を晒した。グイと手を引かれ、濡れた先端が手に触れる。     
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