幸せの温度

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 徐々に覚醒し、そういえば男に襲われかけたことを思い出し身を震わせる。あの男はどうなっただろうと、自室から出てリビングのドアを開けた。 「睦月、起きたか。大丈夫か?」  陽が憂わしげな視線で、ソファーから立ち上がった。 「兄ちゃん~」  葉月が目に涙を浮かべて、睦月の足に縋り付く。葉月に何もなくて良かったと、肩から力が抜けた。 「犯人は捕まったよ。落ち着いたら、警察が話聞かせて欲しいって言ってた」  田ノ上の言葉にホッとする。顔も名前も知らない男に、狙われていたという事実は、睦月を思ったよりも疲弊させていた。 「葉月、一回マンションの中に入って行ったのに。どうして戻って来ちゃったの?」  荒地は多分あの時、マンションに逃げろだとか、管理人を呼んでこいぐらいのことは言ったはずだ。それなのに、危険な場所にどうして戻って来たのかと、つい咎めるような言い方になってしまった。 「だって……」 「あ~葉月は悪くない。俺が言った通りに、マンションの入り口のところから管理人呼んだらしいんだが、相手にされなかったらしい。イタズラだと思ったみたいだ」  オートロックで中には入れずにドアを叩いたらしいが、イタズラをするなと管理人に怒られてしまったようだ。荒地が警察をと叫んだことで、事の重大さにやっと気付いたらしい。ごめんねと謝られたと葉月が言う。     
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