幸せの温度

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「そ、うだったんだ……頑張ったね」 「兄ちゃん……だいじょうぶ?」  葉月を抱き上げ、頬を寄せる。もしもあの時荒地がいなかったらと考えると恐ろしい。ただのイタズラだろう、きっとすぐ終わるだろうという考えは希望でしかなかった。 「明日、学校で写真部の八田と校長とで話があるみたいだ。あいつ、校内で撮ってた写真、やっぱあの男だけじゃなく色んなところで売りに出してたって」  やはり男が持っていた写真は八田が撮ったものだったのか。どれだけの人が自分の写真を買ったのかと想像すると、悍ましさしかない。  しかし、更衣室に貼られていた写真は、一体誰が撮ったものなのだろう。 「制服の件で学校に連絡した時、更衣室に写真が貼られてたってことも聞いた。荒地くんが言ってくれたんだろ? で、誰が撮ったのかわからないってことも。お前はまったく気にしてないようだったけど、エスカレートしていってるようにしか思えなかったからな。学校側としては、外部の人間が入り込んだって考えるより、睦月の席や更衣室の場所を知ってるってことで内部犯だと結論付けたみたいで、校内を巡回する警備の数を増やす程度の対応だったが」     
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