幸せの温度

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 荒地の言葉を継いで、陽が話す内容は初めて聞くことだった。確かに、狙ったように睦月の使う更衣室のロッカーに貼られた写真、睦月の椅子に置かれた制服、どちらも学校内部を知らなければ難しいだろう。  しかし大事にしたくないからと動かなかった睦月の影で、荒地や杉崎が尽力してくれていたのだと思うと、身の縮む思いだ。 「睦月に黙ったままなのは心苦しかったけど、言えば怖がらせると思ったしな。担任には話したけど、他に被害にあった生徒もいなかったし、その時はただのイタズラで片付けられちまって。その後制服の件があって、陽さんが学校に連絡したことで、学校側も何かしらの対応をと思ったんじゃねえか」 「そうなんだ……」 「万が一、外部犯だったらってことも考えて、警察にも連絡はしたんだが、こっちもパトロールを増やしてもらう程度で、何らかの被害が出なければ動けないってことだった。でもお前絶対、大丈夫だからとか言って一人で帰ろうとするだろ? 荒地くんがいてくれて良かったよ」  まさしくその通りで、陽の言葉には弁解のしようがない。もし、陽が早く帰って来てなかったら、もし荒地が一緒にいなかったら、もしも──葉月に何かあったらと考えると、息が詰まるほどの恐怖を感じる。 「ま、取り敢えずお茶でも飲みますか。ほら、睦月くんも座って。荒地くん、結構遅くなったけど、平気?」     
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