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「誰?」
そんな僕のひと言は、まるでやまびこのように2度3度と返ってくる。
ここはとても声が響く、まるで大きな劇場のようだ。
「俺は君だよ」
返ってきたのは、いかにもでありがちな言葉。
「どこにいるの?」
あたりを見回しながら問いかけてみる。
けれど、そもそも視界が不明瞭な今の状態では、声の主を見つけることなんてできない。
反響を続ける声のせいで、声がした方向さえもわからない。
「ここにいるよ」
問いに答える声と共に、ゆっくりと僕の左手が動いた。
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