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今度いたのは、サチの住んでいるマンションの屋上だった。
これは多分、サチが居なくなった日。
サチがこの日着ていた服を、僕はしっかりと覚えている。
サチは屋上の手すりに背を預けて、空を見上げていた。
「私にとってのシアワセって、なんだろうなぁ」
どこか落ち着かない様子で、イライラとしているような声音。
務めて平気な声で話そうとしているサチは、今日は余裕が無さそうだった。
……当たり前か、これから彼女は飛び降りるのだから。
「君のシアワセが何かなんて、俺にはわかんないよ」
僕の意思を介さずに、僕の口が言葉を紡いだ。
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