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何もすることがなくなった僕は壁に寄りかかり、テレビを見ているかのようにぼんやりと華やかな世界を眺めていた。
広いパーティーホール。
燕尾服にシルクハットを纏った紳士達に、いつの時代かと思うような腰からふわっと広がったドレスを着た淑女達が張り付いた笑顔を見せ、優美に振る舞う。
彼らは僕に明らさまな視線を向けることはない。
それが、英国貴族たるマナーだから。
忙しく行き交うシルバートレイにシャンパンやオードブルを載せた使用人達が、時折ちらっと僕に視線を向けるのを感じた。
厨房や休憩所では、僕の話題で盛り上がっていることだろう。
けれど、その方がより人間性を感じられた。
僕は本当にこの虚実が曖昧に入り混じる社交界で、生きていくことが出来るのだろうか。
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