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代理人は母に小切手を渡すと、立ち上がった。
「では、参りましょうか」
貧民街にはおよそ似合わない、車体の長い黒の車が横付けされている。それは後で、ロールスロイスという高級車だと知った。
車の周りには、大勢の人だかりが出来ていた。
代理人に案内され、車の後部座席のドアを開けられた僕が乗り込むのを、みんなが興味津々に見ている。
誰も僕に、シンデレラストーリーなんて想像しちゃいない。
きっとどこかの金持ちに買われて、凌辱されながら生きていくのだろうという憐れみと蔑みの視線を感じた。
僕自身、こんなうまい話があるはずないと、猜疑心に駆られていた。
何しろ、あの母親だ。信じられるはずなかった。
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