地獄の先にあったもの

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 僕が連れて来られた屋敷は、ロンドンでも高級住宅街と言われるナイツブリッジにあった。  そこにはまた、僕が今まで見たことのない世界が広がっていた。  車窓から見える、手入れされた美しい薔薇が咲き誇るブリティッシュガーデン。屋敷内にはプールやテニスコートもあるらしい。  車を降りて屋敷の中を案内されるが、大きく聳え立つ荘厳な扉を見ただけで、いかにここが立派な屋敷かを物語っていた。  広い玄関ホール、数え切れない程の部屋。廊下や部屋に飾られた数々の調度品。ダンスホールやワインセラーの他に、住込の使用人達の部屋まである。  ロンドンの最下層での暮らししか知らなかった僕には、目に入るもの全てが異質に映った。    父との再会など真っ赤な嘘で、やっぱりどこかのエロジジイに売り飛ばされたんじゃ……  そんな思いが僕の心を占めた。
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