「秘密の花園」という名の檻

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「秘密の花園」という名の檻

 スペンサー家に迎え入れられてから一年が経ち、僕は13歳から18歳を対象とした全寮制の私立男子校であり、イギリスの上流階級の子息が通う名門校であるキートン校に入学させられた。  それが、スペンサー家の伝統なのだそうだ。  父と本妻のいる生活に息苦しい思いをしていたので、それから解放されてホッとしたものの、キートン校での暮らしも楽なものではなかった。  伝統に守られた、閉塞的な寄宿舎での生活は、一般市民にとっては「秘密の花園」だ。  「ノブレス・オブリージュ」ーー自由よりも、義務が優先される世界。  それが、上流階級の人間として生きていくための義務であり、強い誇りでもある。  英国紳士としてルールを守り、どんなに辛い時にも涼しい顔を崩さず、エレガントで美しい身のこなしで対処する。  それが、表向きの顔だ。  だが、裏に回れば、飲酒、喫煙、無断外泊。  陰険な嫌味や虐め、罰則という名の行き過ぎた体罰が横行していた。
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