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軋む扉に鍵はない。
「もともとは店のオーナーが倉庫として借りてたとこだけど」
「ここに住んでるの?」
「ん。訳あって」
僕を異質の部屋に招き入れるとテヨンは言った。
打ちっぱなしのコンクリートのせいか
外にいるより空気が冷たい気がする。
「学生は店の寮に入れないからしばらくはここに――」
ストーブに火を入れ裸電球を灯すと
10畳ほどある無機質な部屋が姿を現した。
古びたソファ。
年代物のテレビとラグ。
それでも幽霊ビルみたいな外観に比べれば
中はそれなりに生活感があった。
小さなキッチンには使い込んだ鍋とヤカンがぶら下がっていたし。
壁にはポップアートのポスターが。
簡易ベッドには客からのプレゼントだろうか
可愛いぬいぐるみがいくつか飾ってある。
「まあ、座ってよ」
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