第4章

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軋む扉に鍵はない。 「もともとは店のオーナーが倉庫として借りてたとこだけど」 「ここに住んでるの?」 「ん。訳あって」 僕を異質の部屋に招き入れるとテヨンは言った。 打ちっぱなしのコンクリートのせいか 外にいるより空気が冷たい気がする。 「学生は店の寮に入れないからしばらくはここに――」 ストーブに火を入れ裸電球を灯すと 10畳ほどある無機質な部屋が姿を現した。 古びたソファ。 年代物のテレビとラグ。 それでも幽霊ビルみたいな外観に比べれば 中はそれなりに生活感があった。 小さなキッチンには使い込んだ鍋とヤカンがぶら下がっていたし。 壁にはポップアートのポスターが。 簡易ベッドには客からのプレゼントだろうか 可愛いぬいぐるみがいくつか飾ってある。 「まあ、座ってよ」
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