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でも多分この子は
言葉でなく人の心を読む。
「あ……」
母国語でない国で暮らしているせいか
夜の世界に身を置いているせいか
ただもともと勘がいいのかもしれない。
正面に回り込み僕の伊達眼鏡を外すと
両手で頬を包み込むようにして
テヨンはもう一度
「ん……」
今度は唇の淵から中心に向かって至極丁寧に
まるで模範生のようなキスをする。
「誰に習ったの」
皮肉を言いながら
思わず目を閉じた。
「知らない。忘れた――」
愛しい声。
甘いキス。
微かな笑みが同時に降りてきて
「ンン……」
僕も現実を忘れそうだった。
いや忘れたがっていた。
彼が自分の生徒だということも
職業としてのホストだということも――。
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